忠次旅日記

「国定忠次は鬼より怖い。にっこり笑って人を斬る」と歌われた幕末の上州(現群馬県)の侠客国定忠次は、悪代官をこらしめ農民を救う英雄として講談、浪曲や大衆演劇で人気を集め、大正時代には澤田正二郎演じる新国劇の舞台や尾上松之助主演による映画化が行われていた。

1926年(大正15年)に日活に入社した伊藤大輔は、同年の時代劇映画『長恨』でコンビを組んだ第二新国劇出身の若手俳優、大河内傳次郎を使って従来の颯爽とした英雄忠次像を廃し、子分に裏切られて破滅していく人間くさい忠次像を映画化しようとした。だが、経営陣は、松之助が演じた従来の忠次像にこだわり許可しなかったので、止む無く伊藤は第1部「甲州殺陣篇」でヒーローとしての忠次を描いた。幸い好評を得たので、その実績をもとに本来のテーマである第2部、第3部を製作した。