鼻 芥川龍之介

芥川龍之介の短編、「鼻」。

僧は、長い鼻を気にしているが、自分が気にしていることを人に知られたくはない。

しかし、一人では食事もできないので、食事の間は、弟子に板で鼻を持ち上げておいてもらう。一度、弟子の代わりを務めた中童子が手をふるわせて鼻をかゆの中に落としてしまった事もある。

そんな中、弟子が熱湯で鼻を温めた後に人に踏ませる事によって、鼻が短くなるという話を聞く。

試してみると、本当に短くなった。ところが、短くなった事によって人々に逆に笑われてしまう。

そのうち鼻がむずかゆくなり、朝おきると元通り長くなっていた。
僧は、これで笑われる事がなくなると晴れ晴れとした気分になる。

という話なのだが、要するに、鼻が長いかどうかよりも人に笑われたくないという気持ちが非常に強かった、という事だ。

コンプレックスについての教訓として考えさせられる。

自分が気にしているポイントが何であっても、他人を意識し過ぎているのではないか、という事。

俗世を超越した筈の僧侶だからこそ、人間の弱さを諸にさらしてしまう事態となってしまったのだ。

人には気にしていない様な態度を見せながらも、実は気にしていたんだ、という事実があからさまに分かってしまった為に、嘲笑されてしまう。

鼻が元の様に長く戻った事によって、何も得た訳ではないのに、晴れ晴れとした気分になった僧から、人間の浅はかさを感じ取れる。