歯車 芥川龍之介

芥川龍之介の狂気を垣間見る「歯車」。

レインコートを着た男がことあるごとに現れ、主人公を悩ませる。何で、という位に出てくるのだ。

その他にも黄色いタクシーや鼠など、本当に見えているのか幻覚なのか分からない物が暗示的に現れる。

そして歯車が視界の中で周りだす。

芥川龍之介の、救いのない精神錯乱状態が見えてくる様で、本当に重苦しい。

ペスト アルベール・カミュ 

ペストが蔓延する市で、人々がその脅威に怯えながらも次第に助け合い、立ち向かっていく。

最初はすぐにでも抜け出そうと考えていた記者が、そこに留まる事を決意するのは大変感動的だ。
市を出ようとする事を医師のリウーに打ち明けたところ、リウーの妻も市外に居て、しかも病気療養中である事を聞き、考えを改める。

善良な市民が多いであろうこの町にペストが襲ったのは、神の戒めなどではなく、単に不条理な事なのだと言う前提があり、その中で人はどう対処していくのかを描いているのだろう。

東日本大震災の後で、この「ペスト」が発しているメッセージ性をより一層強く感じた。

コミュニティーの中の正義と、自然の様に人の手に全く負えないものとの闘い。

クヌルプ ヘルマンヘッセ

ヘッセの中でも、特に美しい作品だ。

定職につかず、放浪して、人を傷つけた記憶の中、最後に神との対話を通して、「それも含めて全て良かったのだ」という結論に達する主人公。

赦される、という主題があり、そこが雪の中の描写と合わせて大変美しいのだ。

型にはまらない生き方、死に方。それはとても怖い事ではあるけれど、それもアリなんだと語っている様だ。

序章で人生を謳歌しながらも人を信じられなくなり、2章ではより自由奔放に、最終章では静かに死と向かい合う、
一連の流れが誌的で素晴らしい。

これが「車輪の下」だと、主人公のハンスが疲れ果てて悲しい死を迎えていたり、どこか寒々とした描写となっていて、「荒野の狼」だと完全に精神世界に行ってしまっている。

そういった意味でも、クヌルプにはどこか大らかな雰囲気が漂っている。

東京物語 奥田英朗

6編からなる、作者の自伝的小説。

これが面白い。時系列が、フレッシュな社会人生活から始まり、上京~大学時代~社会人として少し慣れてきた頃~とある休日~独立した後と、少しひねっているところが良い。

当時の歴史を辿る様なアーティスト、事件、社会情勢などなど、エピソードと絶妙に絡み、同世代を生きていなくても当時を知る上でも非常に興味深い。

http://www.seashorelines.com/